Let’s start the marathon

【林田管理栄養士に聞く!】
「食事のポイント」

STEP7 林田管理栄養士に聞く 食事のポイント
STEP
7
林田管理栄養士

林田栄養士はじめまして!マラソンをするにあたり、やっぱり食事が気になります。マラソン鍛錬期の食事で気をつけたほうがいいことはありますか?

林田管理栄養士

林田
管理栄養士

鍛錬期は走行距離が増えて、身体へのダメージが大きいので普段よりも食事量や食事の質に気を付けることが大切です。4つのポイントをご紹介します。

POINT1
日頃の食生活を振り返ってみましょう~バランスの良い食事~
鍛錬期は怪我をせず継続した練習をしたいですよね。それを支えるのが日頃の食事です。理想的な食事は定食型と言われる「主食、主菜、副菜、汁物、果物、乳製品」を揃えることです。運動をされる人に必要な栄養をまんべんなく摂ることがきます。
現在の食事で足りないものはありませんか。
品数を増やさなくても主食、主菜、副菜を一皿にすると片付けも簡単です。それに汁物、果物を入れたヨーグルトを追加したら完璧です。
食事は毎日のことなので、常に完璧を求めずに、まずは数日から1週間単位で食事の質や量を考えてみてください。
POINT2
エネルギーの確保
マラソンは消費エネルギー量が多いので、エネルギー源の糖質はしっかり摂りましょう。主食に糖質が多く含まれているので、練習前はごはんをおかわりしたり、うどんとおにぎり、パスタとパンのように組み合わせるのも食べやすいので良いですね。
一度に食べられない場合は、補食で小さいおにぎり、パン、エネルギーゼリーを取り入れるのもおすすめです。エネルギー不足は、疲労回復の遅れ・集中力の低下を招くので注意してください。

【糖質を多く含む食品】
ごはん、パン、うどん、パスタ、餅、じゃがいも、南瓜、バナナ
POINT3
貧血の予防
鍛錬期は、身体の消耗も激しいので貧血対策を行うと安心です。
鉄は吸収率の高いヘム鉄と吸収率の低い非ヘム鉄に分けられます。

【鉄を多く含む食品】
ヘム鉄:レバー、牛肉(赤身)、まぐろ、かつお
非ヘム鉄:卵、木綿豆腐、厚揚げ、納豆、味噌、あさり、ほうれん草、小松菜

レバーは鉄の含有量が多いですが、下処理が大変なので焼き鳥のレバーはおすすめです。当社グループの陸上部選手たちはお刺身が好きなので鉄火丼やかつおのたたきが人気です。試合前を除いて寮の食事で提供しています。
非ヘム鉄を含む食品は、吸収率が低いですが毎日取り入れられる食材が多いので習慣にして鉄の摂取量を増やしましょう。お味噌汁に豆腐、あさり、ほうれん草を入れると手軽に鉄強化の一品になります。あさり水煮缶は便利な食品です。
まずは好きな食材の食べる頻度を増やすことが、無理なく続けられるコツだと思います。
POINT4
脱水対策
長時間の練習で汗をかくと水と一緒に電解質(カリウム、ナトリウムなど)も失われます。
脱水は熱中症のリスクが高まるので安全に練習するために水分補給は大切です。
まず走り始める30分くらい前までにコップ1杯~2杯(250~500ml)の水分をとりましょう。重要なのは一気飲みをしないように、こまめに少しずつ飲むことです。
一度にたくさん飲んでも水分は吸収されません。
水分を補給するときに水だけよりも糖質と塩分を含んでいるほうが吸収率は高くなります。市販されているスポーツドリンクには糖度が5%程度で、500mlあたり25gほどの糖質が含まれています。成分表を確認してみましょう。
温度は冷えたドリンクのほうが速やかに吸収されます。5℃~15℃が適温で冷蔵庫で冷やした状態です。

練習前・練習中に水分補給を意識される方は多いですが、前日から意識すると尚良いでしょう。飲み物以外に食事からも水分はとることが出来るので、食事には汁物を追加するのが良いですね。例えば、前日の食事に味噌汁やうどんを入れたら水分をしっかり補給することができます。

ご自身の発汗量をご存知ですか。練習前後の体重測定から発汗量を知ることが出来ます。体重減少は練習前の体重2%未満にすることが望ましいとされています。また、尿の色や量からも脱水の傾向を把握できます。練習前に普段よりも量が少ない・尿の色が濃い場合は脱水の可能性があるので注意しましょう。

【脱水の指標】
体重:・朝一番の体重測定 ・1%を超える日々の体重減少は脱水傾向
尿:・尿の回数が減り、尿の色が濃くなる ・朝の最初の排尿時に尿の色を確認
のどの渇き:・のどの渇きは脱水症状のひとつ・のどの渇きがない≠脱水がない

練習中、お腹が痛くなったりするのですが、食事のタイミングが良くないのでしょうか??

林田管理栄養士

林田
管理栄養士

食事のタイミングと内容を見直してみましょう。練習前の食事はスタート時間から逆算して2~3時間前に食事を済ませましょう。
食事内容は、理想的な食事は定食型をお伝えしましたが、練習前は消化の良い糖質中心の食品を選ぶようにしましょう。
消化に必要な時間は食材、料理によって異なります。
脂っこい料理、食物繊維の多い料理は消化に時間がかかるため腹痛の原因になります。練習前にこれらの食材は摂りすぎないようにしましょう。
選手たちは練習前に、親子丼やうどんなど消化の良い料理を食べて練習の準備をしています。
腹痛に関しては個人差があるので、食べた時間・食品を記録して練習時の体調を振り返ってみてください。

マラソンレース前日や当日の食事は何がおすすめですか?

林田管理栄養士

林田
管理栄養士

レース3日前から当日の朝食までは糖質を多くとれる食事にしましょう。目的は身体にエネルギーを蓄えてレース中のエネルギー切れを防ぐためです。試合に向けて糖質の量を増やす食事法を「グリコーゲンローディング法」と言います。普段の食事に追加すると、全体の食事量が増えてしまい消化不良の心配もあるので、サラダの代わりにポテトサラダ、肉じゃがなど糖質を含む芋類のおかずにすると食事の全体量を変えずに糖質の割合を増やすことができます。
揚げ物など油の多い料理やおかずの量を控えて、味付けを少し濃くするとごはんが進みます。麺類は大盛にしたりおにぎりやお餅、パンを追加しても良いですね。
コンディション維持のためにビタミンC豊富な果物も追加しましょう。
前日は生ものや腸内にガスが溜まりやすい根菜類は控え食べ慣れたものを食べてください。
食事メニューの一覧を参考にしてみてください。

3日前の食事スケジュールの一例

朝食 昼食 夕食
3日前 フレンチトースト
ゆでたまご
コーンスープ
バナナヨーグルト
オレンジジュース
うどん
いなり寿司
キウイ
混ぜごはん
鶏の照り焼き
大学芋
味噌汁
グレープフルーツ
2日前 ごはん
鮭の塩焼き
里芋の煮物
味噌汁
オレンジ
トマトソースパスタ
ロールパン
ポトフ
キウイヨーグルト
ごはん
麻婆春雨
南瓜の煮物
味噌汁
りんご
前日 ごはん
納豆
肉じゃが
味噌汁
バナナ
うな重
さつま芋のレモン煮
すまし汁
キウイ
ごはん
豚の生姜焼き
マカロニサラダ
味噌汁
オレンジ
当日 【和食】
おにぎり
力うどん
オレンジ
カステラ

【洋食】
パン(ジャムorはちみつ)
シリアル
ゆで卵
バナナ
林田管理栄養士

林田
管理栄養士

レース当日の朝食は、主食(ごはん・パン・うどん・もち)+果物にして、消化の良いものを食べるようにしましょう。食べる量は腹8分目~9分目にすることも大切です。お腹いっぱい食べてしまうと、消化吸収をするときに内臓への負担が増え、レース中に腹痛を起こすこともあります。
試合前に初めて試すのではなくマラソン練習中に試してから本番に臨んでください。
レースの開始時間によっては早朝で朝食が食べられない場合もあると思います。あらかじめ簡単に食べられるものを用意しましょう。

【朝食が食べられない場合】
おにぎり、パン、カステラ、だんご、大福、フルーツ、果汁100%ジュース、エネルギーゼリー

疲労回復にはどのような食事をすればいいですか?(暑い日や距離走後はなかなか食べる気もおきません・・・)

林田管理栄養士

林田
管理栄養士

糖質とたんぱく質、ビタミンB1を意識した食事が疲労回復を早めます。運動に使われたエネルギー補給に糖質、筋肉の修復に必要なたんぱく質、ビタミンB1は糖質をエネルギーに代謝するときに必要な栄養で胚芽米、豚肉、大豆製品、うなぎ、かつお、鮭などに含まれます。
アリシンという成分はビタミンB1の効果を持続させる働きがあります。玉ネギやニラ、ねぎ、にんにくなどの食材に含まれているので、ビタミンB1を多く含む食品と一緒にとると良いでしょう。

【疲労回復メニュー】
豚の生姜焼き、豚キムチ、餃子、タコライス、ビビンバ

練習後、食欲がない場合はのど越しの良い麺類を選ぶようにしましょう。
具沢山のメニューを選ぶと糖質、たんぱく質を一緒にとることが出来ます。
また消化吸収を助けてくれる食材をプラスするのがおすすめです。山芋やオクラ等のネバネバした食品には、消化吸収を促進する働きがあります。

【食欲がないときにおすすめメニュー】
冷やし中華、豚しゃぶうどん、ねばとろ丼(温玉、長芋、オクラ入り)

おすすめの追加食材~抗酸化食品~
抗酸化作用のある食品は激しい運動によって体内に発生した活性酸素を除去する働きがあります。過剰に増えた活性酸素は、疲労の原因になりパフォーマンスやコンディションにも影響します。

【抗酸化作用のある栄養素・成分を多く含む食品】
ビタミンC:パプリカ、いちご、みかん、キウイ
ビタミンE:うなぎ、鯖、南瓜、ごま、ナッツ
β-カロテン:南瓜、人参、ブロッコリー、ピーマン
リコピン:トマト、柿、すいか

食事のタイミングも意識できるとさらに良いですね。
疲労回復には糖質とタンパク質を同時にとると回復の速度が上がるので、練習後すぐに食事を食べられない場合はスポーツドリンクやプロテイン、牛乳などのドリンクを摂りましょう。その後、2時間以内にバランスのとれた食事をとるのがおすすめです

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暑熱対策~アイススラリー~
暑い日、距離走の後に食欲が落ちてしまうは、運動後体温が上がり内臓疲労を起こしていることも関係しています。
その予防として練習前にアイススラリーを取り入れてみてはいかがでしょうか。
アイススラリーは、液体に微細な氷の粒が混じったシャーベット状の飲み物で、深部体温を効率よく冷やすことができます。
練習前に飲むことで、深部体温を下げることが出来るので運動による体温上昇を抑える効果があります。体温の上昇を抑えることで身体へのダメージを軽減する効果があります。スポーツ飲料などで作ったアイススラリーは、糖質や塩分が含まれるので冷却効果と糖質や塩分、ビタミンなどの補給も同時に行うことができます。

【参考文献】
・今より強く!を目指して~アスリートの身体づくりと食のエッセンス~ 公益財団法人日本映苦情競技連盟医事委員会
・エビデンスに基づく競技別・対象別スポーツ栄養 高田和子・田口素子編著
・理論と実践 スポーツ栄養学 鈴木志保子

WRITER
林田 あや

林田 あや管理栄養士

出身 
埼玉県
出身校
関東学院大学