生命保険資金に求められる長期・安定的な収益を獲得するため、中長期の資産運用方針を策定します。
また、中長期の資産運用方針の方向性を踏まえつつ、保険市場および運用環境の変化により柔軟に対応するため、当該年度の指針となる短期の資産運用方針を策定し、収益の一層の拡大を図ります。
保険商品は個別性が強いことから、商品特性に応じて区分勘定を設定し、きめ細かな負債情報の把握に努めています。その分析成果を、資産運用方針の策定や修正、実際の運用行動にタイムリーに反映することで、より商品特性にふさわしい資産ポートフォリオの構築(資産と負債の統合管理:ALM)を目指します。
生命保険資金の運用には安全性も求められるため、資産運用方針は厳格な運用リスク管理の基準に沿って策定されます。
また、実際の運用行動および保有資産状況についても、日次での運用成果の計測・評価とリスク・モニタリングが実施されています。
生命保険事業は、国民生活の安定・向上、経済の発展および持続可能な社会の実現に密接な関わりを持つ公共性の高い事業であることから、当社は収益性・安全性・流動性に加えて公共性にも配慮した資産運用を実施しています。その一環として、責任投資(ESG投融資、スチュワードシップ活動)を積極的に推進しています。
当社は、「アセットオーナー・プリンシプル(アセットオーナーの運用・ガバナンス・リスク管理に係る共通の原則)」の趣旨に深く賛同し、アセットオーナーとして受益者等の最善の利益を勘案して、その資産を運用する責任を果たしていくために、これを受け入れることを表明します。当プリンシプルの原則1~5について、以下のような方針で取り組みます。
原則1 アセットオーナーは、受益者等の最善の利益を勘案し、何のために運用を行うのかという運用目的を定め、適切な手続に基づく意思決定の下、経済・金融環境等を踏まえつつ、運用目的に合った運用目標及び運用方針を定めるべきである。また、これらは状況変化に応じて適切に見直すべきである。 |
---|
|
原則2 受益者等の最善の利益を追求する上では、アセットオーナーにおいて専門的知見に基づいて行動することが求められる。そこで、アセットオーナーは、原則1の運用目標・運用方針に照らして必要な人材確保などの体制整備を行い、その体制を適切に機能させるとともに、知見の補充・充実のために必要な場合には、外部知見の活用や外部委託を検討すべきである。 |
---|
|
原則3 アセットオーナーは、運用目標の実現のため、運用方針に基づき、自己又は第三者ではなく受益者等の利益の観点から運用方法の選択を適切に行うほか、投資先の分散をはじめとするリスク管理を適切に行うべきである。特に、運用を金融機関等に委託する場合は、利益相反を適切に管理しつつ最適な運用委託先を選定するとともに、定期的な見直しを行うべきである。 |
---|
|
原則4 アセットオーナーは、ステークホルダーへの説明責任を果たすため、運用状況についての情報提供(「見える化」)を行い、ステークホルダーとの対話に役立てるべきである。 |
---|
|
原則5 アセットオーナーは、受益者等のために運用目標の実現を図るに当たり、自ら又は運用委託先の行動を通じてスチュワードシップ活動を実施するなど、投資先企業の持続的成長に資するよう必要な工夫をすべきである。 |
---|
|
2024年度の運用方針については、リスクテイク方針や中長期の資産運用方針に基づき、公社債などの確定利付資産を中心とするポートフォリオ運用を継続します。
また、金融市場の変動に対する財務健全性の確保や資本効率向上のための市場関連リスクの削減取組みも継続していくほか、収益性の確保とポートフォリオのリスク分散を強化するため、選別的なクレジット投資やインフラ分野への投融資、オルタナティブ資産・実物資産への投資なども引き続き積極的に取り組んでいく方針です。
生命保険の商品特性に応じた運用ポートフォリオを構築するために、「運用企画所管」は「商品事業所管」と共同で資産運用方針を策定します。「運用企画所管」は策定した資産運用方針に基づいて資産配分を行い、「運用フロント所管」は、アナリスト業務や資産管理、エンゲージメント等を行う運用サポート所管と協働し、個別資産における銘柄選択や投融資を実行することで、各資産市場において相対的に優位な収益の確保を図ります。
また、「リスク管理所管」や「審査所管」「資産管理所管」では、資産運用に関わるリスク管理やパフォーマンス計測等も行っています。
なお、運用基盤を強化するために、国内外の金融機関・運用会社等へのトレーニー派遣、ジョブローテーション等による人財育成を行っています。加えて、「運用企画所管」「運用フロント所管」「リスク管理所管」に「運用サポート」の専門性や経験を踏まえた人員を配置することで、安定的な運用を可能とする体制を構築しています。
当社の運用プロセスはPDCAサイクルを基本にしています。
まず、「運用企画所管」「商品事業所管」において負債特性に応じた資産運用方針を策定し、この方針に基づいて資産配分や投融資を行います。
次に、「リスク管理所管」と「資産管理所管」が運用成果と運用リスクの計測・分析を行い、その内容を「運用企画所管」「商品事業所管」にフィードバックします。このフィードバックを踏まえて「運用企画所管」「商品事業所管」は、翌年度の資産運用方針の改善策を検討します。
運用プロセスにおいて、運用部門内に留まらず、「運用企画所管」「商品事業所管」「リスク管理所管」が密に連携を取り合うことでPDCAサイクルを回し、常に負債情報を反映しながらALM運用を徹底する仕組みとなっています。
資産運用リスクとは、市場リスク(金利・株式・為替等の市場環境の変化により資産価格が変動し損失を被るリスク)、信用リスク(信用供与先の財務状況の悪化等により、資産の価値が減少ないし消失し、損失を被るリスク)、不動産投資リスク(賃貸料等の変動により収益が減少する、または不動産価格の下落により損失を被るリスク)をいいます。
当社の資産運用リスク管理は、お客さまへの将来の保険金支払いを約束するため、中長期的観点でリスクとリターンのバランスに留意しつつ、資産の健全性を維持することを目的としています。
リスク管理統括部を資産運用リスク管理所管とし、市場リスク、信用リスク、不動産投資リスクを合わせた保有資産全体のリスクについて一元管理し、業務執行所管と連携してリスク管理を行う体制としています。
また、定期的に開催されるERM委員会等において、経営層が各リスクに対する情報を共有化し、意思決定に資する体制としています。こうしたリスク管理機能の有効性・適切性は内部監査部が検証しています。取締役会・経営会議は、リスク管理状況の報告を受け、それに基づいて意思決定を行います。さらに監査役は、経営層をはじめとし、会社のリスク管理全般を対象に監査を実施しています。
◆資産運用リスク管理体制