個人年金保険料控除とは?適用条件、上限額と計算方法を例をあげて解説
個人年金保険に加入している場合、年末調整や確定申告時に個人年金保険料控除の手続きをすることで、一定の条件を満たせば所得税や住民税などの税負担を軽減することができます。
ここでは、個人年金保険料控除の対象となる条件や軽減される税額のほか、個人年金保険料控除の手続きなどについて解説します。
この記事でわかること
- 個人年金保険料控除の上限額は、保険が「新制度」か「旧制度」かで異なる
- 個人年金保険料控除の対象は、4つの適用条件を満たし「個人年金保険料税制適格特約」がある場合のみ
- 個人年金保険の年金受け取りにかかる税金は、契約者と受取人の関係・受け取りかたで種類・区分が異なる
※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
個人年金保険料控除とは
個人年金保険料控除とは、税制上の優遇措置である生命保険料控除のひとつで、払い込んだ個人年金保険料の一部を、所得税や住民税の計算時に合計所得金額から控除できる(差し引く)制度です。個人年金保険料控除を受けるには、年末調整や確定申告で所定の手続きが必要となります。
■生命保険料控除の種類と対象となる保険

なお、個人年金保険は、老後の生活資金などを将来に備えて計画的に準備できる保険です。所定の条件を満たせば個人年金保険料控除を受けられるため、毎年の税負担を軽減できるというメリットがあります。
個人年金保険料控除の上限額はいくら?
個人年金保険料控除の上限額は、保険契約に適用される控除制度が「旧制度(2011年12月31日以前の契約)」か「新制度(2012年1月1日以降の契約)」かによって異なります。
<個人年金保険料控除の上限額>
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旧制度の上限額:所得税が年間5万円、住民税が年間3万5,000円
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新制度の上限額:所得税が年間4万円、住民税が年間2万8,000円
■生命保険控除の旧制度と新制度のイメージ

個人年金保険については、以下の記事をご参照ください。
個人年金保険とは?メリット・デメリットや公的年金との違いを解説
個人年金保険料控除の対象となる条件は?
個人年金保険料控除の対象となるのは、次の4つの条件をすべて満たし、かつ一般生命保険料控除とは別に個人年金保険料控除を受けるための「個人年金保険料税制適格特約」を付加している場合です。
<個人年金保険料控除の対象となる4つの条件>
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年金受取人が契約者(保険料負担者)または契約者の配偶者であること
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年金受取人が被保険者であること
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保険料払込期間が10年以上あること
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年金の種類が確定年金や有期年金の場合、年金支払開始日の被保険者の年齢が60歳以上であり、かつ年金受取期間が10年以上あること
個人年金保険料税制適格特約を付加していない場合や変額個人年金の場合、個人年金保険料控除ではなく一般生命保険料控除となり、ほかの一般生命保険と合算されます。
なお、契約時に個人年金保険料税制適格特約を付加した場合、以下の点にご注意ください。
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「個人年金保険料控除の対象となる4つの条件」を満たさない契約への変更はできない
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個人年金保険料税制適格特約だけの解約はできない
個人年金保険料控除額の計算方法
個人年金保険料控除額は、旧制度か、新制度かによって計算方法が異なります。
<個人年金保険料控除額の算出方法(所得税の場合)>
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個人年金の年間払込保険料等を「旧制度」「新制度」それぞれ合計する
(契約期間中に配当金等を受け取っている場合は、年間の払込保険料から差し引いて計算) -
「1」の金額を「旧制度」「新制度」それぞれの計算式にあてはめて所得控除額の計算を行う
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「旧制度」と「新制度」の所得控除額を合計する
-
「3」の金額と「2」で計算した「旧制度」の所得控除額を比較し、高いほうが所得控除額となる
※個人年金保険料控除額の上限額については、旧制度のみを適用する場合は所得税で5万円、住民税で3万5,000円、新制度のみを適用する場合および新制度と旧制度を合算して適用する場合は所得税が4万円、住民税が2万8,000円となります。
■「旧制度」に該当する個人年金保険料の所得控除額計算式
<所得税>
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年間の払込保険料等 |
所得控除額 |
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25,000円以下 |
払込保険料等の全額 |
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25,000円超50,000円以下 |
(払込保険料等×1/2)+12,500円 |
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50,000円超100,000円以下 |
(払込保険料等×1/4)+25,000円 |
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100,000円超 |
一律50,000円 |
※所得税の合計適用上限額は10万円です
<住民税>
横にスライドしてください
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年間の払込保険料等 |
所得控除額 |
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15,000円以下 |
払込保険料等の全額 |
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15,000円超40,000円以下 |
(払込保険料等×1/2)+7,500円 |
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40,000円超70,000円以下 |
(払込保険料等×1/4)+17,500円 |
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70,000円超 |
一律35,000円 |
※住民税の合計適用上限額は7万円です
■「新制度」に該当する個人年金保険料の所得控除額計算式
<所得税>
横にスライドしてください
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年間の払込保険料等 |
所得控除額 |
|
20,000円以下 |
払込保険料等の全額 |
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20,000円超40,000円以下 |
(払込保険料等×1/2)+10,000円 |
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40,000円超80,000円以下 |
(払込保険料等×1/4)+20,000円 |
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80,000円超 |
一律40,000円 |
※所得税の合計適用上限額は12万円です
<住民税>
横にスライドしてください
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年間の払込保険料等 |
所得控除額 |
|
12,000円以下 |
払込保険料等の全額 |
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12,000円超32,000円以下 |
(払込保険料等×1/2)+6,000円 |
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32,000円超56,000円以下 |
(払込保険料等×1/4)+14,000円 |
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56,000円超 |
一律28,000円 |
※住民税の合計適用上限額は7万円です
個人年金保険以外の生命保険にも加入している場合
個人年金保険以外の生命保険に加入している場合は、保険の種類別に「一般生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」に分けて所得控除額を計算します。3種類を合計した保険料控除額は、所得税で最大12万円、住民税で最大7万円です。
個人年金保険については、以下の記事をご参照ください。
個人年金保険料控除で軽減される税額のシミュレーション
個人年金保険料控除で、支払う税金の額がどれくらい減るのかは、毎月の保険料や加入者の年収によって変わります。
新制度の個人年金保険に毎月1万円の保険料を支払っている、年収600万円の会社員の例を見てみましょう。
※基礎控除を58万円(2025・2026年分は68万円)、社会保険料控除を72万円、計算簡略化のため、それ以外の所得控除はないものとする。
<モデルケース>
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年収:600万円(会社員)
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個人年金保険料:毎月1万円=年間12万円(新制度)
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基礎控除:58万円(2025・2026年分は68万円)
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社会保険料控除:72万円
<所得税と住民税の軽減額>
結論から述べると、所得税と住民税、合わせて年間6,800円の税負担が軽減されます。
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所得税:4万円×10%=4,000円
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住民税:2万8,000円×10%=2,800円
詳しい計算方法について、以下でご説明します。
<個人年金保険料控除の軽減額の算出法>
所得税の課税対象となる課税所得の算出
所得税を求めるには、まず課税所得を算出します。課税所得とは所得税の課税対象となる金額のことで、会社員の場合、給与などの収入金額から給与所得控除や所得控除を引いた額です。
給与所得控除額は、以下の表を参考にしてみてください。
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給与などの収入金額 |
給与所得控除額 |
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190万円以下 |
65万円 |
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190万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
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360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
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660万円超 850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
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850万円超 |
195万円 |
なお、「令和7年度税制改正」により、合計所得金額に応じて所得税の基礎控除額が改正されました。また、2025・2026年分は時限措置として、合計所得金額に応じた金額が加算されます。そのため、年収600万円の場合、2025・2026年分の基礎控除は68万円になります。改正後の基礎控除額は以下の表のとおりです。
■基礎控除額(改正された範囲)
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合計所得金額 |
基礎控除額 |
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2025・2026年分 |
2027年分以降 |
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132万円以下 |
95万円 |
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132万円超336万円以下 |
88万円 |
58万円 |
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336万円超489万円以下 |
68万円 |
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489万円超655万円以下 |
63万円 |
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655万円超2,350万円以下 |
58万円 |
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<課税所得の計算式>
課税所得=年収-給与所得控除-基礎控除-社会保険料控除-その他の所得控除
新制度の個人年金保険に毎月1万円の保険料を支払っている場合、年間払込保険料が8万円超なので、個人年金保険料控除額は4万円です。したがって、年収600万円での課税所得は302万円(2025・2026年分は292万円)となります。

なお、個人年金保険料控除の適用を受けない場合、個人年金保険料控除額4万円が引かれないため、課税所得は306万円(2025・2026年分は296万円)になります。
所得税の軽減額の算出
課税所得に所得税の税率を掛けて、所得税額を算出します。現行の所得税の税率は以下のとおりです。
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課税所得 |
税率 |
控除額 |
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195万円以下 |
5% |
0円 |
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195万円超 330万円以下 |
10% |
9万7,500円 |
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330万円超 695万円以下 |
20% |
42万7,500円 |
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695万円超 900万円以下 |
23% |
63万6,000円 |
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900万円超 1,800万円以下 |
33% |
153万6,000円 |
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1,800万円超 4,000万円以下 |
40% |
279万6,000円 |
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4,000万円超 |
45% |
479万6,000円 |
※課税所得額は1,000円未満の端数金額を切り捨てた金額。
<所得税の計算式>
所得税額=課税所得×税率-控除額
したがって、課税所得が302万円の場合の所得税額は20万4,500円(2025・2026年分の所得税額は19万4,500円)です。

なお、個人年金保険料控除の適用を受けないときの課税所得は306万円となり、所得税額は20万8,500円です。つまり、個人年金保険料控除の適用で所得税が4,000円減ることになります。
住民税の軽減額の算出
住民税の税率は所得にかかわらず一律10%です。新制度での年間払込保険料が12万円の場合、個人年金保険料控除額は2万8,000円なので、個人年金保険料控除を適用した場合の住民税の軽減額は2,800円です。

なお、個人年金保険料を年間8万円以上支払い、個人年金保険料控除を行った場合の所得税と住民税の年間軽減額は、以下のとおりです。
■所得税・住民税の年間軽減額
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課税所得 |
所得税軽減額 |
住民税軽減額 |
合計軽減額 |
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195万円以下 |
2,000円 |
2,800円 |
4,800円 |
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195万円超 330万円以下 |
4,000円 |
2,800円 |
6,800円 |
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330万円超 695万円以下 |
8,000円 |
2,800円 |
1万800円 |
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695万円超 900万円以下 |
9,200円 |
2,800円 |
1万2,000円 |
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900万円超 1,800万円以下 |
13,200円 |
2,800円 |
1万6,000円 |
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1,800万円超 4,000万円以下 |
16,000円 |
2,800円 |
1万8,800円 |
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4,000万円超 |
18,000円 |
2,800円 |
2万800円 |
個人年金保険料控除手続きの流れ
個人年金保険料の控除手続きの流れについて確認しておきましょう。基本は、生命保険料控除証明書を年末調整か確定申告の際、必要書類に添付して提出すれば完了です。
控除手続きの具体的な流れについて、以下でご説明します。
<個人年金保険料控除手続きの流れ>
生命保険料控除証明書を受け取る
生命保険料控除のためには、生命保険会社が発行する生命保険料控除証明書が必要です。生命保険料控除証明書は、毎年10月頃に郵送されるほか、ウェブサイトの加入者用ページからダウンロードできる場合があります。
会社員・公務員は年末調整で生命保険料控除証明書を提出する
会社員や公務員といった給与所得者は、年末調整手続きの際、「給与所得者の保険料控除申告書」に生命保険会社名や控除金額などを記入して、生命保険料控除証明書を勤務先に提出します。
個人事業主・フリーランスは確定申告で生命保険料控除証明書を提出する
年末調整による申告を行わない場合や個人事業主、自営業などは、確定申告書の生命保険料控除の欄に記入し、生命保険料控除証明書を添付します。
年金を受け取る際には税金がかかる
個人年金保険の年金を受け取る際には税金がかかります。また、個人年金保険の契約者と受取人の関係により、かかる税金の種類が違います。

契約者と受取人が同一の場合は「所得税」
個人年金保険の契約者と受取人が同一の場合、受け取る年金には所得税がかかります。なお、年金の受け取りかたで所得の区分も異なります。
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毎年一定額を年金形式で受け取る
毎年一定額を年金方式で受け取る場合、年金は雑所得(給与所得や不動産所得などの分類にあてはまらない所得)として扱われます。
■年金方式で受け取る場合の課税額の計算式

-
一時金として全額受け取る
個人年金を一時金として受け取る場合、一時所得(労働や資産売却などから得たものではない一時的な所得)として扱われます。
■一時金として受け取る場合の課税額の計算式

契約者と受取人が異なる場合は「贈与税」
個人年金保険の契約者と受取人が異なる場合、受取人が契約者から年金を受け取る権利を贈与されたとみなされ、初年度のみ贈与税(2年目以降は所得税)が課せられます。
生命保険の保険金にかかる税金の種類と非課税枠については、以下の記事をご参照ください。
生命保険金の受取時に税金はかかる?非課税枠など税制優遇制度も解説
年末調整・確定申告時に個人年金保険料控除の手続きを
個人年金保険料は、個人年金保険料控除の適用により税負担を軽減することができます。
個人年金保険について不明点がある場合は、FP(ファイナンシャルプランナー)や保険会社などに相談することもおすすめします。下記のリンクから相談してみてはいかがでしょうか。
よくある質問
Q. 個人年金保険料控除は年間いくらまで?
個人年金保険料控除の上限額は個人年金保険料のみの場合、所得税が新制度で年間4万円(旧制度では年間5万円)、住民税が新制度で年間2万8,000円(旧制度では年間3万5,000円)です。
そのほかの生命保険料控除(一般生命保険料控除、介護医療保険料控除)を合わせた場合、所得税は最大12万円、住民税は7万円までです。
個人年金保険料控除の上限額については、以下の項目をご参照ください。
Q. 個人年金は税金がかかりますか?
個人年金保険は、保険料を支払っている期間は個人年金保険料控除が受けられますが、個人年金を受け取る際には税金がかかります。かかる税金の種類は、個人年金保険の契約者と受取人が同一の場合は所得税、異なる場合は初年度のみ贈与税、2年目以降は所得税です。
個人年金にかかる税金については、以下の項目をご参照ください。
Q. 個人年金保険料控除の手続き方法は?
個人年金保険料控除を利用するには、毎年10月頃に生命保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」が必要です。基本は、控除証明書を年末調整か確定申告の際に必要書類に添付して提出すれば手続きが完了します。
個人年金保険料控除の手続きについては、以下の項目をご参照ください。
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辻󠄀田陽子
FPサテライト株式会社所属。税理士事務所、金融機関での経験を経て、「好きなときに好きなことをする」ため房総半島へ移住。移住相談を受けるうちに、それぞれのライフイベントでのお金の不安や悩みがあることを知り、人々がより豊かで自由な人生を送る手助けがしたいと思いFP資格を取得、FPとして活動を始める。現在は地方で移住相談や空き家問題に取り組みながら、FPの目線からやりたいことをやる人々を応援中。
所有資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、日商簿記2級
※この記事は、ほけんの第一歩編集部が上記監修者のもと、制作したものです。
※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
※税務の取り扱いについては、2025年9月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。
(登)C25N0112(2025.12.8)
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