担当者インタビュー

SETAGAYA Qs-GARDENはwell-beingの実現に貢献する「第一生命らしさ」を詰め込んだまち

不動産部
ファシリティマネジメント課
辰巳 仁

第一生命が、東京・世田谷区で「地域住民のwell-beingの向上」をコンセプトにした、まちづくりを進めています。「みんなのしあわせ」「地域のしあわせ」「地球のしあわせ」をたくさん詰め込んだ、第一生命らしいプロジェクトで、そのまちの名前は「SETAGAYA Qs-GARDEN」。
半世紀以上にわたって大切にしてきた潤いにあふれた緑豊かな森が、2023年3月、地域に開かれた心豊かなまちへと生まれ変わります。このまちづくりに込めた第一生命の思いについて、プロジェクトを牽引する辰巳仁さんに聞きました。

「人々のwell-being」を大切にしたまちづくり

「SETAGAYA Qs-GARDEN」プロジェクトは、いつ頃からスタートし、どのようなコンセプトの下で進められているのでしょうか。

辰巳SETAGAYA Qs-GARDENの舞台となる世田谷区給田(きゅうでん)のこの土地は、1954年に当社が取得して以来、福利厚生施設「第一生命グラウンド(相娯園)」として活用してきました。グラウンドの稼働率低下に伴い、社有不動産の有効活用プロジェクトとして始まったのが、SETAGAYA Qs-GARDENプロジェクトです。
事前調査を開始したのが2016年の秋頃のことで、約9ha、東京ドーム2個分もある敷地全体の再測量、既存の樹木すべて一本一本の調査・プロットなど地道な作業からプロジェクトが始まり、現在のようなまちづくりの構想がまとまったのは2019年の秋頃でした。

まちづくりに当たって当社が掲げたコンセプトは「地域住民のQOL向上」。その根底にあるのは、「第一生命だからこそできるまちづくりをやりたい」という強い思いです。ただ、「第一生命らしいまちづくり」といっても明確な定義や基準があるわけではありません。「第一生命らしさ」をいかに形にしていくのか、深く考え、「人々のwell-being」に貢献することを大切にしようという思いに行き着き、まちづくりを具体化していきました。

第一生命は、人とのつながりを大切にする会社でもあります。ですから、いろいろな人の意見を聞きながら、地域の住民の方々と共にまちをつくり、育てていくことも大事です。どういったまちが出来上がるかという結果だけでなく、そのプロセスも第一生命らしさを大切にしてプロジェクトを進めています。

「SETAGAYA Qs-GARDEN」は、どのようなまちになるのですか。

辰巳「みんなのしあわせ」「地域のしあわせ」「地球のしあわせ」を具現化し、まちに落とし込んでいるのが特徴と言えます。

みんなのしあわせにつながる、クリニックモール、レッドクレーコート、森のランニングコース、地域のしあわせにつながる、ファミリー向け分譲マンション、学生向け住宅、健康増進型・賃貸シニアレジデンス、地球のしあわせにつながる、太陽光発電パネルや小型風力発電機…。
3つのしあわせの実現に貢献する施設や設備が、SETAGAYA Qs-GARDENの中に配置されます。

ハードだけではありません。グラウンドで子どもの運動教室やスポーツイベントを開催したり、モビリティサービスを活用したり、地域のしあわせ・みんなのしあわせに貢献する多様なサービスを導入・展開していく予定もあります。

こうしたまちづくりを、丸紅都市開発株式会社、相互住宅株式会社、NTT都市開発株式会社、野村不動産株式会社を事業パートナーとし、プロジェクト内の各取り組みにも自治体や数多くの企業・団体の参加・協力を得て進めているところです。

「まちびらき」は2023年3月の予定ですが、「世田谷区立給田松の香公園」はすでに2020年9月に完成し、先行オープンしています。野球場「J&Sフィールド」の改修も終わり、地元の日本女子体育大学、世田谷区と契約・協定を結び、地域のスポーツ施設として2022年1月から利用されています。土曜・日曜・祝日は予約がいっぱいの状況で、地域の皆さんにも喜んでいただいていることを実感しています。

価値ある施設の整備だけでなく、有意義な活用策をも盛り込んだ計画

「地域住民のwell-beingを高める」ための施設や仕組みがたくさん盛り込まれていますが、その中で辰巳さんが思い入れのある、このプロジェクトを象徴するようなものを教えてください。

辰巳プロセスも含めて象徴的という意味で、あえて一つ挙げるとすれば、「テニスコートのレッドクレー化」ではないでしょうか。
レッドクレーコートは当初のまちづくりメニューには入っていませんでしたが、社内外のいろいろな方々と話をする中で「より付加価値の高いものにしよう」ということになり、計画を見直しました。
その結果、屋外型として国内初の全仏オープン会場ローランギャロス仕様のクレーコート化することになりました。私自身テニス経験はほとんどないのですが、テニスに関するお仕事をされている方に聞くと皆さん「レッドクレーコート化は夢のような話」だと語っていましたね。

SETAGAYA Qs-GARDENプロジェクト自体が、一つの完成形を目指して突き進むという性格のものではなく、途中の段階であっても良いものはどんどん採り入れようという姿勢でやっています。当初の計画を常にブラッシュアップさせていて、レッドクレーコート化もその一例です。

そして、価値あるレッドクレーコートを、その価値を認めてくれる人に有効に使ってもらうことも大事だと考えました。そこで、2021年8月に日本テニス協会と協定を締結し、次世代を担うジュニア選手の強化・育成拠点として活用したり、テニスの普及と地域住民のQOL向上のための初心者向けテニスイベントを共同で開催したりといった、さまざまな取り組みで連携していくこともまちづくりに盛り込んでいきました。

まちの魅力や価値がさらに高まり、地域住民の皆さんのwell-being向上に資する具体的メニューを増やしていくためには、新しいものも採り入れ、価値ある施設・設備を整備するだけでなく、その施設の有効で意義ある活用策までを計画することが重要です。その意味で、テニスコートのレッドコート化を起点にした一連の取り組みは、SETAGAYA Qs-GARDENプロジェクトを象徴していると思いますし、このまちと、まちづくりに対する第一生命の考え方が上手く表現されたものになったと思っています。

テニスコートの他にも当初の計画を見直し、ブラッシュアップさせていった部分はありますか。

辰巳「森のランニングコース」も、当初の計画にはなく、途中から追加されたものです。今回のプロジェクトの一環として当社グループの女子陸上競技部の寮を敷地内で場所を変えて新設するに当たり、監督やゼネラルマネージャーら女子陸上競技部の皆さんと対話する中から生まれたアイデアです。
プロジェクトに関わるさまざまな人たちがこのまちに思いを寄せてくれていて、その思いを形にしていく私たちがいて、そうした人々がワンチームになって取り組まれているのが、SETAGAYA Qs-GARDENプロジェクトなのだと感じています。

「第一生命だからできるプロジェクトに」。社長のメッセージで決まった“揺るぎない軸”

緑豊かな環境を残しつつさまざまな施設を配置するのは、とても難しいプランニングだったのではないでしょうか。

辰巳不動産開発では、収益性を考え、樹木をすべて伐採して建物をできるだけ多く建てていくのが通常の手法です。それは、建物を多く建て、より多くの人に住宅を提供したり、都市機能のための空間をより多く確保したりといったことが社会のためになるという考え方からくるものでもあります。しかし、SETAGAYA Qs-GARDENプロジェクトでは、その考え方でまちづくりを行っていません。

実は、開発検討当初では、樹木をすべて伐採する、オーソドックスな手法の計画になっていたのですが、「それが本当に第一生命としてやりたいことなのか。誰がやっても同じような結論になる開発を、第一生命がやるのか」という疑問があったのです。

そんな中、プロジェクトが動き始め、会社として開発を正式に決定する手前の段階で、当時の稲垣社長から「目下の経済的な価値だけを主眼にするのではなく、当社だからこそできるプロジェクトにしてほしい」という主旨のメッセージを受け取ったことをきっかけに、計画を大幅に見直し、考え直すことになったのです。

「第一生命らしい」まちづくりを実現するためのターニングポイントと言えそうですね。

辰巳このとき、プロジェクトの背骨となる“揺るぎない軸”が出来上がっていったように思います。「第一生命らしさ」というところに立ち返り、「人々のwell-beingを高める」という目的意識が、プロジェクトのメンバーにも浸透していったと思います。

その結果、当社の創業者である矢野恒太ゆかりの「蒼梧記念館」や歴史的建造物である「光風亭」も「第一生命らしさ」を象徴する建物として捉え直すこととしました。取り壊して新しい建物を建てた方が投資効率は上がりますが、第一生命として護るべきは護ることとし、また、残すにしても、ただ残すのではなく残してどう活かすのかまで考え、検討しました。
そして、光風亭は、地域の多世代交流拠点として生まれ変わり、蒼梧記念館も保存し活用していくこととしました。

この開発計画に関する行政との折衝には、相当な時間を要しました。行政側が定めた道路の予定線は直線的なものだったのですが、既存樹木をできるだけ残し、既存建物も活用できるものは活用することにしたため、そうした計画にはなりませんでした。行政側と話し合いを重ね、私たちの考え方を説明し、理解をしてもらいました。

「第一生命らしいwell-beingを高める新しいまちづくり」という理念が、誰にとっても、誰から見ても納得感のある、普遍的な価値を持つものだったからこそ、行政に限らず、関係する多くの人の理解と協力を得て、ここまでプロジェクトを推し進めることができたのではないかと思います。

近隣住民からの応援を受けて、第一生命らしい「well-being」の実現へ

SETAGAYA Qs-GARDENプロジェクトは、地域の皆さまにはどのように受け止められているのでしょうか。

辰巳2019年12月にこのまちづくりの構想をプレス発表したのですが、ほぼ同時期に、近隣住民の方々への説明会を開催しました。大規模な不動産開発の場合、近隣住民の方からは厳しいご意見をいただくことも多いのですが、このプロジェクトではまったく違っていました。当社への期待や前向きなご意見をたくさん頂戴し、「私は第一生命の味方だから」と力強く応援してくださる方もいらっしゃいました。

それは、福利厚生施設という形ではありましたが、第一生命が半世紀以上にわたってずっとこの場所で地域の方々と触れ合い、寄り添いながらやってきて、良好な信頼関係を築いてきたことが大きな要因だと思います。
この説明会での皆さんの声には心を動かされました。それまで培ってきた部分を大事に残しながら、より広く、いろいろな皆さんに、新しく出来るまちを開いていくというこのプロジェクトをちゃんとやり遂げていかなければと、改めて思いましたね。

プロジェクトも大詰めの段階を迎えていると思います。ここまでのところを振り返って、辰巳さんは、どのような思いを持っていますか。

辰巳SETAGAYA Qs-GARDENプロジェクトでは、社会的にもほとんどやったことがないこと、第一生命として初めて取り組んだことが、数多くありました。

例えば、設置を予定している小型風力発電機の開発では、社会的に前例がないような新しい技術の導入・実用化を目指しています。定期借地権分譲マンションは当社として初めての事例ですし、野球場を日本女子体育大学や世田谷区に貸し出して収益事業化するのも、当社初めての事例です。
前例がなく、自ら道筋を付けていかないといけない状況に置かれたとき、創業者である矢野恒太の「世間の人が喜ぶか、なくてもよいと思うかを考えよ」という言葉が、常に道標となっていました。

そうやって一つひとつ挑戦し、課題をクリアしながらプロジェクトを進めてきた中で、「地域住民のwell-beingの向上」という理念を、多くの関係者の皆さんに共有していただけたことを実感しています。今では、社外の方同士がwell-beingについてディスカッションし、当社の社員よりも白熱した議論を展開しているほどで、とてもうれしく感じています。

今後は、タウンマネジメントを行う法人を関係事業者と共に設立し、まちびらき後も持続的なまちの発展を支えていくことを目指しています。
いろいろな要素を「well-being」に束ね、SETAGAYA Qs-GARDENに落とし込みました。もうすぐ、まだ誰も見たことのないまちが出来上がります。私自身、それをとても楽しみにしているんです。

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