栗原さん(50歳)は、少し油断をしていたら1年間で体重が3kg増えた。「これは大変だ!」と、毎朝の体重を手帳につける事を習慣化してみたら、大した努力もなく数ヶ月で体重が元に戻り、今も維持している。腹囲も小さくなり今年の健診ではメタボ非該当と判定され、ホッとしている。この話を健康保険組合につとめる永井さんに披露したところ、永井さんから「油断してはだめですよ」と、面白い話を聞かせてもらった。
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に該当するかを判定するメタボ健診導入後、メタボという概念は短期間で定着し生活習慣病への関心は高まった。しかし、健診の際「メタボ判定では非該当なので、血糖値等の検査結果が有所見(異常)であってもメタボじゃないので心配無用」と勘違いする健康保険組合員が出てきたとのこと。
栗原さんは、改めて自分の定期健診結果の解説を読んでみた。メタボの判定基準は「内臓脂肪の蓄積(腹囲)」、「脂質異常」、「高血圧」、「高血糖」の4要素からなり、メタボに該当するか否かは内臓脂肪の蓄積が必須条件で、これに他の要素が1つ加わればメタボ予備群、2つ以上ならメタボ該当と記載されていた。確かに腹囲基準には非該当でも生活習慣病のケースはあるので、栗原さんも生半可な知識で誤解していることに気がついた。
永井さんによれば、腹囲基準は「内臓脂肪の蓄積」と相関関係があり、簡単に測定できて理解しやすいことから導入されたとのこと。腹囲基準がメタボの代名詞として浸透し、なじみの薄いメタボリックシンドロームを定着させた点は評価できるものの、それが一人歩きした弊害も生じているらしい。また、加齢とともに消費エネルギーが減るので太りやすくなること、個人差はあるが体重が1kg減少すると腹囲が約1cm小さくなること、有所見でない健診項目も経年の変化を見ることが大事であること、などを教えてもらった。
栗原さんは、毎年のメタボ判定結果に一喜一憂しないですむよう、あらためて50代からの健康管理をどうしようかと情報収集を始めている。