夫から妻へのギフト「差額ベッド代」

夫から妻へのギフト「差額ベッド代」妻が脳内出血で入院・手術した加藤さん(63歳)。妻は、手術後2か月目に入っても意識を回復しないが、医師からは「そろそろ一般病棟に移る」といわれた。今の高度治療室は4人部屋である。看護婦さんの目は届くし、同室の患者さんの面会人との話もよいのだが、やはり何かと気を使う。息子家族や親戚が来たときも不便だ。移るのなら個室がよいと加藤さんは感じていた。しかし、個室は差額ベッド代が必要になる。
差額ベッド代は健康保険対象外で、法定の負担以外に患者が支払う費用の1つである。病院により様々に設定されており、個室だと1泊1万円程度から数万円という例もある。加藤さんの妻が入院した病院では、1万円と1万8000円の2通りがあった。現在は1万8000円の部屋に空きがあるという。
早速、加藤さんはその部屋を見せてもらった。八畳ほどの広さでトイレほかに電話、テレビ、冷蔵庫が備えられ、小さめだがソファーセットもある。窓からの眺めもまずまずだ。差額ベッド代だけで月に50万円を超える計算だが、何よりナースセンターの真ん前であることが気に入って入室を決めた。
さて、いよいよ今月分の請求書が渡される日になった。覚悟はしていたものの医療費と30日分の差額ベッド代に消費税がつき、合計で約60万円。医師からは、リハビリを含め長い目で回復を待つことが大切だといわれている。この調子で入院が長びけば、入院費は莫大な金額になる。しかし、妻には今までずいぶんと苦労をかけた。贅沢かもしれないが、こんな時こそ二人でコツコツ貯めた貯金の使い時だとも思う。加藤さんは、妻が意識を回復して「いい部屋ね。ありがとう」といってくれる日を心待ちにしている。