あの世離婚

あの世離婚女性のサークル仲間の昼食会でのこと。ひょんなことからお墓の話題になった。ひとみさん(47歳)は、こう口火を切った。「夫と一緒のお墓はイヤだと前から思っているの」。すると「私も!」「私も!」。次々に声が上がった。多くは40代後半から50代の女性だ。
なぜ、妻は「あの世離婚」を望むのだろうか。「そもそも、こんな話を夫にしたことはないわ」と、ひとみさん。「あのバカがまたバカ言ってる、ってなもんよ」「うちの夫だって、私の話なんて聞いてないわ」と仲間の由紀子さん。話の結論をせかしたがる夫と、結論までの過程を詳細にしゃべりたい妻…。みなさんも思い当たるふしがありませんか。「ちゃんと話を聞いてくれる夫だったら、別のお墓に入りたいなんて思わないわよ」。なるほど。妙に説得力がある。
離婚にはエネルギーがいる。経済力も必要だ。人生をやり直す気力や若さはもうない。長年連れ添った情も湧き、老いた夫を見放すようなことも多分できない。でも「あの世では夫と暮らしたくない!」という夫への漠然とした不満。
もちろん、そんな人ばかりではない。「別のお墓に入るなんて、信じられない」という人が多いが、「夫の先祖のお墓はイヤだけど、夫と二人ならいい」という、姑とは別墓希望者もいる。「あの世で嫁姑争いがまた勃発するのはウンザリ」と考えている女性は少なくない。「こんな話をしてるなんて、夫が知ったらびっくりするわよ」。みんなで大笑いした。
夫のみなさん、「別のお墓でもいいさ」と言っている場合ではない。あの世で妻をとるか、母親をとるか。死後の問題ではなく、夫婦別墓は"妻の夫への最後の反乱"なのだ。