親から子に伝えておきたいこと

親から子に伝えておきたいこと西本さん(58歳)は、37歳のとき両親が相次いで亡くなり、若くして家の"跡取り"の立場におかれることになった。社会人となってからは、転勤族のため親との距離が遠く離れ、親子の会話も大きく減少した。そして、その後10年余り転勤で転々としているうちに永遠の別れとなってしまった。
したがって、両親の若い頃のことや先祖のこと、親せきのことやお墓のことなどほとんど何も聞かされなかったらしい。いわば"引き継ぎ"なしに37歳で"跡取り"になってしまった訳である。「遠隔地にある先祖のお墓をどうするか、ここ20年余り先送りにしてきたが、そろそろ結論を出さなくては」と最近悩んでいる。
西本さんと同じ年である横田さんはこの話を聞き、「自分の場合はどうだろう。親として子どもに伝えておくべきことはしっかりと伝えてきただろうか?」と考えてみた。
横田さんの場合、子どもが大学に入ったころから家族で食事を一緒にする機会も少なくなり、親子の会話は大きく減少、その後就職して家を出ていった時が実質的な親子の別れ。さらに、結婚でますます親子の距離が遠くなってしまった。振り返ってみると、親として子どもに伝えるべきことは、ほとんど伝えてこなかったようだ。
日本の場合、このような傾向にある家庭は多いのではないだろうか。特に、父親と子どもの会話は、外国に比較して極端に少ないようだ。若いうちから親子の対話の機会を増やす努力が望まれる訳である。しかし横田さんのように子どもが既に巣立った後では、手遅れの感は否めない。子どもに伝え残したいことがある場合は、「自分史」のような形で残しておくことも一考の余地があるかもしれない。