今年57歳になった内藤さん、会社主催のライフプランセミナーに参加した。定年後の家庭経済、健康といった話も参考になったが、「夫婦関係の立て直し」という点が気になった。
これまで仕事一筋で家庭のことはすべて妻まかせにしてきており、家事も一切できない。定年後は三度の食事も妻に頼らざるを得ず、地域とのかかわりも妻の協力無しにはうまくいきそうにない。妻に頭が上がらない生活が予想され、がく然となる。
在職中、家庭を全く顧みなかった夫に見切りをつけ、定年と同時に離婚する妻が増えているという。とても人ごととは思えない。夫婦円満の秘けつとして「共通の趣味を持つという方法がある」との講師の話が耳に残った。
セミナーを受講した翌週の日曜日、いつものように早朝ゴルフの練習に行ってみると、これまで気にも止めてなかった数組の中高年夫婦の姿が目に付いた。そこでは夫が妻にゴルフの指導をしている。内藤さんはハッと思いついた。夫としての面目を保ちつつ夫婦円満に暮らすため、ゴルフが共通の趣味になっているということ。早速次の日曜日、妻を早朝ゴルフの練習に引っ張り出した。
全く興味を示さないかと思ったら、妻の友人たちも結構ゴルフをしているらしく、以前から関心があったということが分かった。これまでほとんどしたこともなかった誕生日プレゼントの名目でハ-フセットを贈り、定年後一緒にプレーできることを目標に指導を開始した。
これで退職後の家庭生活の不安からひとまず開放され、内藤さんはホッと胸をなで下ろしたところである。後は、いつまでたっても100前後で進歩しない自分のスコアの改善が最大の課題として残っている。