仲間とやりがい

仲間とやりがい熱烈なファンも多い東京目黒区のチーズケーキ専門のJ店。創業以来32年間、四種類のチーズケーキのみを作り続けている。
女性雑誌のケーキ特集常連店でもあるJ店の味は、定年退職をした職人たちが守っている。創業者は、プラスチックメーカーのサラリーマンであったAさん。定年退職を目前に、定年後の生活をどうしようか考えていた矢先、アメリカ人の友人にホームメードのチーズケーキをごちそうになり、「これだ」とひらめいたのだという。それまでは台所に入ったこともなかったAさんだが、友人に教わったレシピを頼りにチーズケーキ作りに奮闘し、お店までオープンさせた。「やることが何もないのは辛いから」とは当時のAさんの言。
お店をオープンするにあたってAさんが考えたのは、仲間と一緒に働くこと。現在、男性の職人は10人いるが、みんな、Aさんの知り合いか、会社の後輩だ。一番若い人で62歳。Aさんが亡くなったあと、会社の後輩が店を継いでいるが、お互い前職時代は接点がなくても同じ会社に勤めていたというだけで、仲間意識が芽生え、不思議と話もはずむ。
入店して5年目のBさん(67歳)もAさんの後輩。「定年といっても、まだまだ元気。ボランティアや趣味の毎日ではハリがない」と、この道に飛び込んだ。勤務は朝7時から午後3時まで。2日おきに休みがある。10kg以上のケーキ生地をオーブンから出し入れするのは重労働だが、晩酌が最高に旨く、精神的にも充実している。「もっとたくさん作って欲しい」という声もあるが「作れる範囲でがんばりすぎないことが大切だ」。
息の合った仲間と働きがいがあれば、一生現役の人生はいつまでも若々しく、輝きつづける。J店のチーズケーキのおいしさの秘密はこんなところにあるのだろう。