当社は、日本全国の約1,000万名の保険契約者からお預かりした約36兆円の資金を幅広い資産で運用する「ユニバーサル・オーナー」として、多様なステークホルダーを意識した資産運用を行う必要があると認識しており、生命保険会社としての社会的役割も踏まえ、投資リターンを獲得するだけでなく、地域・社会の課題解決に貢献していくことも使命と考えています。
2015年11月にはESG(環境・社会・ガバナンス)要素を運用プロセスに組み込むことを提唱する国連責任投資原則(PRI)に署名しており、同原則に基づいたESG投資の取組みを推進することにより、中長期的な投資リターンの獲得と社会課題の解決の両立を目指しています。
国連責任投資原則(PRI) | 当社の方針 | |
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1 | 私たちは、投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込みます。 | ESG課題の解決に繋がるテーマを持つ資産に幅広く投資を行うとともに、資金使途の確認等のモニタリングを行います。また、ESG要素を体系的に投資プロセスに組込むESGインテグレーションを推進します。 |
2 | 私たちは、アクティブオーナーとなり、オーナーシップに関する方針と実践にESG課題を組み入れます。 | ESG課題をエンゲージメントの重要テーマと位置づけており、対話を通じて投資先企業の課題解決に向けた取組みを後押しします。また、債券の投資先企業に対しても同様のエンゲージメントを行います。 |
3 | 私たちは、投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求めます。 | 投資先企業との対話の中で、ESG課題に関する情報開示、特に統合報告書等を通じた財務情報・非財務情報の統合的な開示の充実を求めます。 |
4 | 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行います。 | 国際的な会議や各種研究会への参画により、業界団体等との情報交換や積極的な意見発信を通じてESG投資の普及・促進を後押しすることで、市場発展に貢献します。 |
5 | 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために協働します。 | ESG課題解決を目的として設立された主要なイニシアティブに率先して関与・参画することで、国内外の業界団体や運用機関との連携・協働を行います。 |
6 | 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。 | ESG投資とスチュワードシップ活動の報告を統合した「責任投資活動報告」の公表や、個別投資案件ごとのプレスリリースでの情報開示等を通じて、当社のESG投資に関する取組みについて積極的な発信を行います。 |
当社は、責任投資に関する重要な方針等は、社外委員が過半を占める「責任投資委員会」の審議を経て策定・改訂し、取締役会・経営会議に報告する態勢としています。
毎年アセット横断的なESG投資の取組方針を策定し、「責任投資会議」における進捗フォロー・議論等を通じて、資産運用部門全体の取組みを推進するとともに、PRIの年次アセスメント結果を活用し、グローバル水準を踏まえた取組みのレベルアップを実施しています。
なお、当社におけるESG投資の手法は以下の通り定義しています。
ESG投資手法 | 定義 | |
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収益性を前提とした、社会課題解決に繋がるテーマを持った資産等への投資 | ||
運用収益の獲得と社会的インパクトの創出(社会の構造変化等)の両立を意図して投資判断を行う投資手法 | ||
SDGs債への投資、再生可能エネルギー発電関連のプロジェクト・ファイナンス、地方創生・地域活性化に資する投融資等 | ||
投資プロセスへのESG要素の体系的な組込 | ||
企業分析・評価においてESG要素を体系的に組込 | ||
ESG格付等が高い企業でポートフォリオを構築 | ||
特定の業種・企業等をポートフォリオから除外 | ||
ESG対話 | ESG課題に関する、投資先企業とのエンゲージメント活動 |
2019年12月現在
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投資テーマ (SDGs17の目標に対応) |
主なESGテーマ型投資事例 | |
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インパクト投資 | その他テーマ型投資 | ||
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貧困撲滅 | ||
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飢餓撲滅 | - | |
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健康的な生活・福祉 | ||
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質の高い教育 | ||
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ジェンダーの平等 | ||
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安全な水・衛生 | - | |
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持続可能なエネルギー | ||
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持続可能な経済成長・完全雇用 | ||
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インフラ整備・イノベーション | - | |
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不平等解消 | - | - |
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持続可能な街づくり | - | |
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持続可能な消費・生産 | - | - |
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気候変動への対応 | ||
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海洋資源の保全 | - | |
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陸上生態系の保全 | - | - |
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平和で公正な社会 | - | - |
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グローバル・パートナーシップ | - |
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■欧州復興開発銀行「マイクロファイナンスボンド」への投資 |
![]() 写真提供元:欧州復興開発銀行 |
2015年12月には欧州復興開発銀行の発行した「マイクロファイナンスボンド」に約120億円投資しました。マイクロファナンスボンドにより調達された資金は、民間融機関から十分な資を受けるのが難しい開発途上国の中小・零細企業に対する事資金の投融資に充てられます。 | ||
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■国際復興開発銀行が発行するサステナブル・ディベロップメント・ボンドへの投資について |
![]() ©ChorSokunthea/ World Bank |
2019年7月には、世界銀行グループの国際復興開発銀行が発行するサステナブル・ディベロップメント・ボンド(総額約108億円)の全額を購入しました。サステナブル・ディベロップメント・ボンドにより調達された資金は、農作物の貯蔵技術の向上や食品廃棄物のリサイクル事業等、IBRDの食品ロス・廃棄問題意への取組み等に提供されます。 | ||
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■予防接種のため国際金融ファシリティ(IFFIm)が発行するワクチン債への投資 |
![]() Sala Lewis/Gavi/2008 |
2019年7月、予防接種のための国際金融ファイリティが発行するワクチン債に約52億円投資しました。ワクチン債によって調達された資金は、GAVIを通じて、新たなワクチン開発資金として「感染症流行対策イノベーション連合」に供給されます。 | ||
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■米州開発銀行「EYEボンド」への投資 |
![]() 写真提供元:米州開発銀行 |
2015年7月には米州開発銀行の発行した「EYEボンド」に約5,000万米ドル投資しました。EYEボンドにより調達された資金は、ラテンアメリカ・カリブ海地域の①Education:教育、②Youth:若年層支援、③Employment:雇用支援を目的としたEYEプロジェクト向けの融資に充てられます。 | ||
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■アジア開発銀行「ジェンダー・ボンド」への投資 |
![]() 写真提供元:アジア開発銀行 |
2017年11月にアジア開発銀行の発行した「ジェンダー・ボンド」へ約100億円を投資しました。ジェンダー・ボンドにより調達された資金は、アジア太平洋地域の女性活躍推進プロジェクトに使用されます。 | ||
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■豪州淡水化プラント事業向けプロジェクトファイナンス |
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2017年12月に豪州における、大規模干ばつ発生や将来的な人口増に伴う水不足に対応するための世界最大級の海水淡水化プロジェクトへ約44億円を投資しました。 | ||
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■ドイツ洋上風力発電事業向けプロジェクトファイナンス |
![]() 写真提供元:Veja Mate Offshore Project GmbH |
2017年1月にはドイツにおける洋上風力発電設備建設プロジェクトへ約35億円の投資を行いました。 | ||
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■国際金融公社「インクルーシブ・ビジネス・ボンド」への投資 |
![]() 写真提供元:国際金融公社 |
2014年12月には国際金融公社の発行した「インクルーシブ・ビジネス・ボンド」に約1億米ドル投資しました。インクルーシブ・ビジネス・ボンドにより調達された資金は、低所得者層も含めた経済成長を可能にする取組支援に充てられます。 | ||
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■コートジボワール政府向けのインフラ資金融資 |
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2019年8月には、コートジボワール政府に対し約60億円のインフラ資金融資を行いました。インフラ投資により調達された資金は、空港や医療施設の拡充、教育プログラムの提供等、約300のインフラ整備事業に充てられます。 | ||
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■英国高速鉄道事業向けプロジェクトファイナンス |
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2017年12月に英国における英国ロンドンと英仏海峡を結ぶ109kmの高速鉄道線路および同区間の駅・関連施設等の運営・維持を行う高速鉄道線路コンセッションプロジェクトへ約45億円を投資しました。 | ||
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■国際復興開発銀行が発行するグリーンボンドへの投資 |
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2019年6月には、世界銀行グループの国際復興開発銀行が発行するグリーンボンド(総額約108億円)の全額を購入しました。グリーンボンドにより調達された資金は、再生可能エネルギーやクリーンな都市交通の整備をはじめとした、温室効果ガスの排出削減および気候変動の影響に対処するための開発プロジェクトへの融資に当てられます。 | ||
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■国際復興開発銀行「サステナブル・ディベロップメント・ボンド」への投資 |
![]() ©World Bank |
2019年11月に、世界銀行グループの国際復興開発銀行が発行するサステナブル・ディベロップメント・ボンドへ約54億円投資しました。調達された資金は、トルコの都市開発における廃棄物の処理プロセス改善等、海洋プラスチックごみ削減取組み等に充てられます。 |
当社では、運用収益の獲得と社会的インパクトの創出の両立を意図した投資手法であるインパクト投資も積極的に取り組んでいます。インパクト投資を行った企業については、企業の取組みや社会的インパクトの進捗状況を継続的にモニタリングしていきます。主な事例は以下の通りです。
当社は、社会課題の解決に向け、日本全国の約1,000万名の保険契約者からお預かりした約36兆円の資金を幅広い資産で運用する「ユニバーサル・オーナー」としての視点で、第一生命自身のESG投資の積極推進・取組高度化に加え、エンゲージメント活動(投資先との対話)や普及促進取組を通じて日本の社会全体(企業・投資家)の取組レベルアップへの貢献を目指し、「地方創生・地域活性化」に積極的に取り組んでいます。これまでの主な取組み事例は以下の通りです。
<これまでの主な取組み事例>
当社では、株式リサーチおよびクレジットリサーチにおいて体系的にESG要素を組み込んでいます。パフォーマンスへの影響を定期的に検証し、ESGを加味したリサーチプロセスの中長期的な高度化に取り組みます。
当社では、株式とクレジットのリサーチにおいて社内のアナリストが企業の成長性や安全性を評価する際、定量的な財務情報に加え、環境問題等の社会的課題解決に資する製品・サービスの競争力、マネジメント力等の非財務情報(=ESG情報)も体系的に組み込んでいます。非財務情報の分析では、まず業界ごとにマテリアリティを特定したのち、個別企業ごとに企業価値に与える影響を分析しています。分析結果は、株式の成長性評価や社内格付に反映させた上で、投資判断を行っています。なお、非財務情報の分析に当たっては、スチュワードシップ活動における対話内容も考慮しています。
当社資産の運用を目的としたESGファンドのインハウス運用(外部に委託しない自家運用)を通じて、ESG取組みに優れた企業への投資を実施しています。2010年から運用している国内株式に加え、2019年には外国株式でも運用開始しました。
◆国内株式のESGファンド構築手法
◆外国株式のESGファンド構築手法
当社は不動産投資においてもESG要素を組み込んでおり、環境に配慮した不動産開発やQOL向上に資するテナント誘致(保育所等)を推進しているほか、全国で多数保有する不動産を活用した社会課題解決に資する取組も積極的に行っています。
東京都世田谷区所在の“第一生命グラウンドを活用したまちづくりプロジェクト”では、地域住民のQOL向上に資するスマートシティをコンセプトとしており、健康増進・地域活性化・スポーツ振興等を推進するとともに、当社のインパクト投資先である株式会社チャレナジーの風力発電技術や太陽光発電パネルを活用した施設建設を予定する等、環境問題の解決にもつながるまちづくりを目指しています。
(まちづくりのイメージ)
取組みの詳細は、以下のリンク先をご参照ください。
生命保険事業の特性や社会の持続可能性の観点から、以下の分野については、投融資禁止としています。
●ネガティブ・スクリーニングの対象
スクリーニング対象分野 | 対象資産 |
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兵器製造(クラスター弾、生物兵器、化学兵器、対人地雷、特定通常兵器) |
●株式投資
●プロジェクト・ファイナンス
●債券投資
●不動産投資
●企業融資
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石炭火力発電 | ●プロジェクト・ファイナンス |
●ネガティブ・スクリーニングのプロセス