今や多くの企業で実施されている退職準備セミナーでは、「生きがい」を何に求めるかといったテーマも設けられている。定年後の自由時間は、現役40年間の仕事時間に匹敵するくらい膨大にあり、趣味を持つことの大切さを問うている。
しかし、40年近く仕事一筋で生きてきて、定年間近になって急に趣味を持てといわれても無理というもの。趣味が無くても、快適に過ごすことができれば、それで十分ではないだろうか?
仕事に追われていた現役時代と同じように、定年後今度は、必死になって趣味を追う人を時々見掛けるが、こっけいだ。
自分自身がやっていて快適と感ずる「何か」があればいい。「何か」とは人それぞれで、何でもいいのだが、まず「身体を動かしてすること」と、「頭を使ってすること」のバランスを取ることは大切である。定年後はどうしても運動不足になりがちだし、頭を使う場面も減少気味となる。
また、「家の中ですること」と、「出掛けてすること」のバランスも意識したい。夫が定年を迎える時の妻の大きな不安は「夫がずーっと家にいること」らしい。
さらに、「自分一人ですること」と、「誰かと一緒にすること」のバランスも意識した方が良い。自分一人より仲間と一緒の方が楽しいし、また夫婦一緒にやることもあった方が、会話が弾む。
定年後、仕事仲間との関係は急速に疎遠になりがちで、地域や趣味仲間との人間関係を広げる努力が大切だ。しかし、いくら仲のいい友人といっても、月に一度も会えないかもしれない。
結局、定年後は「孤独」なのだ。心の支えであり、一番頼りとする妻についても、先立たれる可能性を覚悟しておく必要があるのかもしれない。孤独に強くなる訓練も必要ではないだろうか?
(2002年6月4日 東京新聞掲載)
